北陸鉄道 モハ3761 97/1/5 鶴来にて
〜石川県、北陸本線を軸に多くの私鉄を統合、多彩な路線網を持っていた北陸鉄道は、路線同様バラエティに富んだ車両群を展開していました。同社は現在２路線を営業するにとどまっており、いずれも近代化が完了していますが、今なおかつての車両群の残栄が検車区で眠りに就いています〜
鶴来の車庫の片隅でひたすら眠るモハ3761。近代的な車体に更新されていることもあり、意外なほど整備状態は良好です。ちなみに原型は張り上げ屋根でした。
●現在車籍を有するのは以下の５両です。
・北陸鉄道（石川総線）モハ3751・3752・3761
（浅野川線）＊モハ3563・＊3301
北陸鉄道の２路線のうち、石川総線は'90年に元東急7000系を投入、在来車のほとんどを置き換えましたが、その直前に車体の全面改修を行った4両が除籍を逃れ、予備車として残存することになりました。それがモハ3751・3752・3761・3762です。3762はその後電装解除されクハ1301として浅野川線に転属、昨年度同線で最後を迎えています。
モハ3750系は'51年に加南線（現廃止）用のモハ5000系として広瀬車両で新造されたもので、新造時から張り上げ屋根、そしてクロスシートが特徴の温泉街行き電車として活躍していたのでした。'64年に石川線に転属、ロングシート化され、その後制御装置の更新、貫通路を取り付けて3750系に改番、'83年に車体の全面改修を受けています。一方モハ3760系はモハ5000系と同時にモハ5100系として登場、こちらは初めからロングシート車で、新造以来石川総線で活躍してきました。同族3両のうちモハ5101は後に浅野川線に転属、改造を受けつつも改番されず、昨年まで活躍していましたが現存しません。残る2両は3750系同様の経過をたどっています。
こちらは比較的原型を残して更新されたモハ3751、3760系も原型はシル・ヘッダー付きでこの形態でした。現在は2連を組んでイベントや非常時の運行に入ります。
一方、一昨年暮れに京王3000系に置き換えられ、同時に昇圧された浅野川線では、現在もなお2両の在来車が在籍しています。まずモハ3301は'58年日車製の車両で、当時各線に登場していた「北鉄標準スタイル」の車両です。ただしなぜか窓一つ分短く、全長15mのかわいい電車です。新造時は金石線（現廃止）に配属、ポール集電で道路脇をゆっくり走っていましたが、'64年に3750系と入れ替わりに加南線に転属、パンタを付けたのち'69に浅野川線に転属、近代化改造を受けつつ活躍してきました。置き換え直前にはホーム嵩上げに伴うステップの埋め込みと特別塗装が施され、これは現在もそのままです。一方、モハ3563は'23年木南製で（当時は木南工場）、詳しくは「木南車両製の車両」の項をご覧いただきたいのですが、北鉄各線を渡り歩き、幾多の改造、改番を経た歴戦の車両です。浅野川線では晩年は予備車に近い存在で、除雪用の大きなスノープロウを付けている機会が多かったようです。かなりの改造が施され、原型はあまりとどめていませんが、唯一の戦前製車両ということもあり、クラシックな外観を持っています。現在は同様にステップの埋め込みがなされ、結果的に側ドアの高さがかなり不足してしまいました。
8800・8900系（←京王3000系）への置換後、なぜ残存していたのか不思議だったモハ3301です。最終期にイベント塗装になってそのままですが、営業時は2連だったため、相方の亡き今は貫通路だけ元の色なのがちょっと情けないです。
両線は既に車両の近代化が終了しています。石川総線は昇圧をしなかったため、現在も残存車の走行は可能で、実際置き換え当初は鶴来--加賀一の宮間の折返し運用を想定してた様ですが、実際にはほとんど走行の機会には恵まれておらず、年に数回2連で動くのみのようです（最近の例では97/11/28）。ただ、置き換え前に近代化改装を受けていること、整備状態は良好なことから、今後も予備車としてある程度存続すると思われます。一方、昇圧された浅野川線の２両は、昇圧改造された様子もなく、実際には走行は不可能と思われます。そして今年4月末に就役した8900系第3編成と入れ替わりに内灘から姿を消しました。既に土葬に伏されたものと思われます。合掌。
7000系置換直前の営業運転時の姿。当時はラッシュ時2連で、後ろの3731は置換時に除籍されています。もう一度走っている姿を見たいのですが・・・