［17m級旧型国電］

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概要	△TOP　▲MAIN

　明治末期の木造車から、72系全金車に至るまで、20世紀前半を彩ったいわゆる「旧型国電」は、実の所、私鉄に譲渡されたのは17m級の車両と社形（後述）がその大部分を占めていました。しかもそのほとんどが、いわゆる戦災国電で、国鉄から直接地方私鉄に譲渡された車両はごくわずか、末期にはそれすらもなくなり、最終的に残ったのは、そのほとんどが戦災国電でした。
　そして、これらの車両もこの５年間に急速に淘汰され、現在では旅客用の車両は事実上消滅、という本稿でももっとも絶滅が危惧されるグループとなっています。

　過去５年間の除籍車両

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■1995 ～ 1999 年度間に除籍された車両は、以下の通りです。

　弘南鉄道　モハ3601　（←東急デハ3601←国鉄モハ31087）
　　　　　　クハ3675　（←東急クハ3675←国鉄モハ50114）
　　　　　　クハ3672　（←東急クハ3672←国鉄モハ30025）
　　　　　　モハ3608　（←東急デハ3608←国鉄モハ30175）
　　　　　　クハ3773　（←東急クハ3773←国鉄クハ65027）
　　　　　　クハ3674　（←東急クハ3674←国鉄モハ30045）
　　　　　　モハ3613　（←東急デハ3606←国鉄クハ65096）
　　　　　　クハ3780　（←東急クハ3780←国鉄サハ78032）
　　　　　　モハ1122　（←西武モハ328←国鉄モハ50058）
　　　　　　クハ1612　（←西武クハ1319←国鉄クハ65003）
　弘南鉄道には数多くの旧型国電が集結していました。中には国鉄直接譲受の車両や社形も存在しましたが、そのほとんどは戦災国電で、弘南線の3600系は東急による戦災復旧車、大鰐線に最後まで残った2両は西武の戦災復旧車でした。
　弘南線の3600系は、戦災復旧時に車体を新造したグループ（3613等）と応急復旧の後、いわゆる「東急中型標準車体」に更新されたグループに分かれていました。1995年当時は8両が在籍し（ちなみにあと1両、クハ3778が存在しましたが、これは「戦災旧客」ナハ22068の復旧車の為、本項では除外します。）、朝夕の快速運用を中心に7000系に吾して運用されていましたが、同年南海1521系の譲受によって急速に置換が進み、1997年にはモハ3601、クハ3672、3773の3両が予備車として残るばかりとなってしまいました。しかも1997年の鉄道の日に電機と併結してのイベント運転を最後に全く動かなくなり、平賀の側線で長らく死んでいました。
　一方、大鰐線の2両は先述の通り西武経由の車両ですが、両車とも旧国の形態を良く残し、さらにモハは張り上げ屋根で、戦前の雰囲気を今に伝え大変貴重な存在でした。ただしこちらも南海1521系2両の投入によって予備車となり、「川造型」クハ1267と3連を組み、1997年夏のビール列車運用を最後に大鰐で死んでいました。
　そして1999年6月、これらの車両は一斉に除籍されました。現在、大鰐線の2両はそのままの状態で大鰐の側線で鳥葬、弘南線の3両は黒石の旧黒石線用車庫に押し込まれており、姿を見ることは出来ません。

　伊豆箱根鉄道　クモハ163 （←相鉄モハ2021←国鉄モハ11084）
　　　　　　　　クモハ164 （←相鉄モハ2006←国鉄モハ30133）
　　　　　　　　クハ185 （←相鉄クハ2509←国鉄モハ16106）
　　　　　　　　クモハ166 （←相鉄モハ2010←国鉄モハ50013）
　　　　　　　　クハ187 （←相鉄クハ2510←国鉄クハ16156）
　　　　　　　　コデ66 （←国鉄クモハ12000）
　1970～80年代の伊豆箱根鉄道大雄山線は、まるで60年代の西武線が引っ越してきたかのような旧型国電のパラダイスでしたが、5000系の新造投入に並行して数を減らし、ついに1996年10月10日、最後の編成165-166-187が引退運転を行い、165を除いてその後、除籍、土葬されています。
　現車は旧西武色から西武からの譲受車と思われがちですが、なんと相鉄からの譲受車で、相鉄が60年代初頭に輸送力増強の為に大量に譲受たものです。相鉄時代に前面非貫通、Hゴム化、前面張り上げ屋根化等の標準化がなされ、独特の形態をしていました。
　もう１両のコデ66は、称号に「工事用電動車」を冠することからもわかる事業用車で、大場工場への入出場車や保線用車両の牽引を担当していました。国鉄からの直接譲受で、地方私鉄への譲渡車の中でも最も原型に近い形態と言えた車両でした。先の旅客用車の引退の後も残存すると思われていたのですが、旅客車のモハ165が後任として事業用車化され、コデ66は1997年3月に除籍、土葬されてしまいました。後任の「コデ165」については後述します。

　大井川鉄道　モハ311　（←西武クモハ374←国鉄クモハ11424）
　　　　　　　クハ511　（←西武クモハ371←国鉄クモハ1142）
　大井川鉄道には西武経由で2両の戦災国電が在籍していました。原形は良く残していますが、1988年に2扉セミクロス化され、旧国とはわかるものの、長距離用らしい独特の雰囲気をたたえた車両になりました。ワンマン化もされていましたが、90年代後半からは近畿圏からの高性能車の投入で出番が他客時の４連運用ぐらいになってしまいました。
　事実上最後の「現役旧型国電」として末永い活躍を期待したかったのですが、老朽化の度合いもひどく、1998年の7月末に引退運転を行いました。その後は千頭に留置、11月には事故による予備車不足から奇跡の復活運行が行われたものの、結局同年12月に新金谷の側線にて土葬されてしまいました。

　現存する車両

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■2000 年 4 月 1 日現在、在籍する車両は、以下の２両です。

　伊豆箱根鉄道　コデ165（←伊豆箱根モハ165←相鉄モハ2024←国鉄ｸﾓﾊ11109）
　先にも述べましたが、伊豆箱根鉄道大雄山線には、事業用車として1両、旧型国電が現存します。これがコデ165で、1997年3月の工事用車両化にあたっては、客室内に機器を設置し、側戸の大半を埋め、両運転化、塗装の大幅な変更（黄色地に青の稲妻模様）が施され、前任のコデ66に比してすっかり印象を異にしてしまいました。その稲妻塗装からいただいた通称が「ピカチュウ電車」^^;;。
　現在は、大場車庫への入出場車の牽引を主な仕事としています。

　伊予鉄道サハ502 （←東急サハ3350系←池上モハ20系←鉄道院デハ6310系)
　伊予鉄道には「旧型国電」というにはちょっとイレギュラーな車両が１両在籍します。サハ502は元々東急サハ3350系でして、さらに元をたどると昭和初年に池上電鉄が鉄道省より払下げを受けた『院電』デハ6310系（大正2年製）を鋼体化した車両です。現車は台車交換、新性能化されたものの（なんと空気バネ台車に全電気指令ブレーキ！）車体は東急時代のままであり、少なくともその台枠は院電以来の車令80年という『最後の現役院電』ということになります。なお、現車は東急除籍時にいったん車籍が抹消されてまして、かつ伊予鉄入りの際、改造した西武所沢工場において一部車番に混乱が見られたため、正確な車番はここでは示さないでおきます。
　同車は現在では同社唯一の非冷房３連の中間車となってしまい、極希に高浜線の朝１往復の運用にはいることがある他は古町で寝込んでいます。当初は610系の新造投入後、早期の除籍が危惧されていましたが、1997年11月に検査を受け、現在もなお矍鑠たるものです。

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■最後に、本稿の対象範囲外ですが、大手私鉄に残存する17m級旧型国電について触れておきましょう。

　相模鉄道　モニ2005　（←国鉄モハ30097）
　　　　　　モニ2019　（←国鉄モハ11008）
　　　　　　モニ2023　（←国鉄モハ11103）
　先にも触れたとおり、相鉄は戦後の草創期から1950年代末にかけて、国鉄より旧型国電を譲受してきましが、そのうちなんと3両が現在も在籍しています。モニ2005は戦災国電、他の2両は1959～1960年にかけての譲受で、後者は譲受時に、前者も1963年に東急車輌で全面的な更新を受け、いわゆるモハ31スタイルに統一されています。相鉄では17m級の旧型国電を2000系として系列化していましたが、後にそのほとんどがアルミ車体の2100系に更新（現在も活躍中、現車は下回りの機器流用、新造扱いであり、後年下回りを新性能化した為種車の面影は残っておらず、本稿ではノミネートしていません。）され、余剰となった車体が伊豆箱根等に譲渡されています。そして残存車両のうち6両が荷電化され、うち3両が両運化等の様々な改造を受けながらもスタイルを大きく崩すことなく、現在も在籍しているのです。
　現在の3両の仕事は、かしわ台工機所での入換業務の他、モニ2023の屋根に設置されているキューポラを使用した架線検測で、特に後者は、毎月の月初めに3連で全線を検測、白昼堂々、本線を疾走する姿を見ることが出来ます。

　そして…

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　もはや、私鉄において旧型国電に乗車することは…叶わなくなってしまいました。
　あとは、戦前の関東私鉄型の面影を残す、伊予鉄サハ502の長寿と、伊豆箱根、相鉄の事業用車の活躍を見守るのみですね。

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last updated on 2000.10.22